昨日10月22日(日)14:00から、彫るぞ!彫るぞ!木版画を彫るぞ!「小﨑侃さんによる木版画実演と体験」と題したワークショップを開催しました。
小﨑侃さんは長崎を代表する木版画家です。1942年熊本市生まれで、島原、加津佐を経て、長崎市で過ごしました。大平洋美術学校彫刻科をご卒業後、多数の木版画を制作、1983年には木版画集『合掌』を発表、原爆で家族を亡くした俳人 松尾あつゆきの句集木版画で大きな反響を得ました。その後、代表作となる『山頭火シリーズ』を発表。全国各地で個展を開催しています。『葉隠』『蝶々さん 連作』など、詩情豊かな木版画の世界を拓いています。作品はガラス絵、襖絵、彫刻に及び、観る人の心と共鳴し、包み込むおおらかな世界がどこまでも深く高く表現されています。
会場には、そんな小﨑先生から木版画を体験しようとたくさんのお客様が参加しました。
まず、お客様ご自身の下絵や小﨑先生がご持参された下絵の上にトレーシングペーパーを重ね、透けてみえる下絵を鉛筆でなぞっていきます。小﨑先生は「後で彫っていくから詳細に写さなくても大丈夫」とアドバイス。少し安心してお客様はのびのびと写しとっていました。
次に、トレーシングペーパーを裏返して、カーボン紙を版木との間にはさめ、再度、鉛筆でなぞっていきます。これで版木に下絵が写りました。
その後、みなさまを集めて、薄い墨汁で線をなぞっていくと説明されました。つまり、薄い墨汁の色をつけることで彫りやすくするためです。彫刻刀“切りだし”の解説では、北斎の時代は“切りだし”で彫る技術が基本だとおっしゃっていました。しかし、ビギナーのみなさんは“三角刀”の方が使いやすいとか。小﨑先生は、“切りだし”と“三角刀”を使いわけながら、彫っていくコツを伝授されていました。
いよいよ版木を彫る作業の体験です。みなさま、黙々と彫っていきます。中には、15年も教室に通っているお客様もおられ、マイ・彫刻刀を使い、手慣れた手つきで作業を進めていました。
最後は、小﨑先生がみなさまを集め、着彩です。今回は多色刷りではないので、1枚の版木にさまざまな色をのせ、1回で済ませます。「バレンは下に押しこむようにこする」とコツを教えてくださいました。
そして「北斎展」にご来場されたオーディエンスのみなさまも足をとめ、みなさまが見守るなか、「せ~の」で版木から紙をはがすと同時にみなさまからの歓声!!可愛らしいふくろうの版画が仕上がりました。
2時間で完成させる想定でしたが、なかなか彫る作業に苦戦し、仕上げることができませんでした。しかし、ご帰宅後、素敵な版画が完成していることを期待しています!
参加してくださったお客様、そして小﨑侃さん、ありがとうございました。
次の「北斎展」イベントは10月24日(火)11:00からの聴くぞ!聴くぞ!解説を聴くぞ!「学芸員によるギャラリートーク」です。本展担当学芸員の中野英行が作品解説を行ないます。